南都 十輪院 奈良市十輪院町27 TEL.0742-26-6635

こころの便り

暑中お見舞い申し上げます。

令和3年7月1日

平素より当山の活動・運営に多大なご理解とご協力を賜り、謹んで感謝申し上げます。
コロナウィルスワクチンの接種は少しずつ進んでおりますが、まだまだお盆やお彼岸の帰省などに際し、ご不安をお抱えの方も多くいらっしゃると思います。一人ひとりの思いやりで、多くの方が恐れや我欲、怒りから離れ、支え合えることを切に祈ります。

この1年間、私たちはここ数十年では最も多くの、そして速さを伴った「変化」を経験したのではないでしょうか。この変化をお釈迦さまは「無常」という大原則として説いてくださいました。この世に無常ならざるものはありません。新型コロナウィルスだけが変化をもたらした訳ではなく、全ての当たり前が本来かけがえのないもので、必ず移り変わっていくものです。「安定」を心地よく感じる私たちには、頭ではそれを理解できても、実感しながら生活することが困難です。

この半年間、手帳に印刷された、二十四節季や七十二候という古来の暦を、改めて意識してみました。大寒の初候は「款冬華(ふきのはな さく)」、立春の次候は「黄鶯睍睆(うぐいす なく)」、啓蟄の末候は「菜虫化蝶(なむし ちょうと けす)」などといったものです。1年を72にも分ければ、およそ5日毎に季節の変化を確認することが出来ます。私自身コロナ以前から出不精で、一日門の外に出ない日も多々ありますが、境内を見回しただけでも、草木や生物の変化に気付きます。曜日の感覚は人並みに意識しているつもりですが、「今日からまた同じ1週間」という感覚を繰り返すことを辞め、「今週は先週とは全く違う1週間にりそうだ」と思うことに、違和感がなくなりました。そのうえで、「このかけがえのない1週間にどんなご縁があり、自分はどんな役割を果たせるか」と考えます。

「国立遺伝学研究所」がホームページで公開している動画「全地球史アトラス」を観ました。地球誕生から地球の未来まで、大規模な気候変動を繰り返し、時代ごとに異なる生命が繁栄し、いずれ全ての生命が絶滅、地球は膨張する太陽に飲み込まれて消滅するそうです。そうであれば、私たちが生かされることの意義は、不調和を解消し、他者の幸福を祈り、やすらぎを与え、それぞれに自分の役割を果たすだけのように思います。


十輪院 住職 橋本昌大

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