南都 十輪院 奈良市十輪院町27 TEL.0742-26-6635

こころの便り

新年あけましておめでとうございます。

令和2年1月1日

平成の時代が終わりましたが、昭和の時代に比べて寺院を取り巻く様相が大きく変化した時代でもありました。


家族葬、直葬、炉前葬、墓じまい、仏壇じまい、終活、エンディングノート、永代供養、散骨、自然葬、手元供養、寺離れ、檀家制度崩壊、宗派不問などといった言葉はすべて平成時代の30年間に生まれたものです。時代の流れと言ってしまえばそれまでですが、これほどの変化はかつてなかったことと思います。宗教離れという見方もありますが、一概にそうとはいえません。


確かに世界的に見ても宗教離れが進んでいることは確かです。欧米ではすでに1960年代から信者数とともに司祭や修道僧の減少が始まっています。アメリカでは教会での日曜礼拝をする人は減って教会はイベントの会場になってしまっている所もあります。ヨーロッパの修道院でも修道僧の還俗が目立っています。キリスト教は一神教なので、キリストを信じなければ信じる対象は存在しえないのです。原理主義者、唯物論者が増加していく可能性を秘めています。


しかし、日本人は無宗教者が多いといわれていますが、多神教民族でもあります。特定の宗教を信仰しなくても、なにがしかの信心を有しています。例えば、自然界の中に神秘性を感じることがあります。大きな岩や大木に霊が宿ると考えたり、神風が吹いたとか。また、貰っただけのお守りでも踏みつける気にはとうていなれません。処分したいお位牌でも生ごみと一緒に捨てる気にはなれません。


オウム真理教事件や極端な新興宗教に対する警戒心から、宗教全般にアレルギーを持っているひとが多いかも知れませんが、心の奥には常になにがしかの漠然とした宗教心を持っているのが日本人だと思います。


昭和の時代は働くことによって幸せを求めました。平成時代は働くこと以外に幸せを求めざるを得なくなりましたが、どこに幸せを求めるのか答えはなかなか見つかりません。上記の平成に生まれたそれぞれの言葉は迷いの結果のような気がします。


令和の時代になり今までのような祖先崇拝に重きを置いた信仰形態を変えていかなければなりません。2500年の歴史を有する仏教を基軸として、人々の幸福につながる新しい日本仏教が求められます。


十輪院 住職 橋本純信

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